ここまで違う!シングルローターヘリとマルチコプター機

一般的に「ドローン」と聞くと、アームの先にモーターが搭載され、プロペラの付いたマルチコプタータイプのものを想像すると思います。しかし、ドローンの正式な名称は「無人航空機」であり、ラジコン飛行機やラジコンヘリコプターもその中に入ります。そんな中、ラジコン飛行機はドローンとはかけ離れた存在ですが、ラジコンヘリコプターは、マルチコプタータイプのドローンと部分によっては近い存在であると言えますし、しかしかなり異なっている部分もあります。そこで今回はシングルローターヘリとマルチコプター機の違いについて見ていきたいと思います。

①機体の制御方法の違い

シングルローターヘリはその名の通り、メインローターが1つだけとなっており、大きなメインローターを回して揚力を得て浮上します。一方、マルチコプター機は主に4~8個のプロペラを回転させて浮上するようになっており、機体のサイズにもよりますが、ひとつひとつのプロペラはそこまで大きなものではありません。両者で大きく異なるのは、機体の制御方法になります。シングルローターヘリはメインマストに取り付けられたスワッシュプレートをサーボで傾かせ、メインローターの角度を変えることで前後左右に移動します。また、機首の向いている方向を変える場合は、テールローターの角度をサーボで制御しておこなっています。一方、マルチコプター機はそれぞれのプロペラの回転数を変化させることで前後左右への移動や機体の向きの制御をおこなっています。

②可変ピッチと固定ピッチ

本格的なシングルローターヘリは、そのほとんどの場合、可変ピッチ機構を採用しています。これは、メインローターの角度を飛行中に自由に変化させることができるもので、これによって回転数を下げずとも降下してこれたり、マイナスピッチを設定しておくことで背面飛行ができたりします。飛びの幅は非常に広くなりますが、その分、設定が難しくなるデメリットもあります。3DフライトやF3Cのようなパターン戦後をおこなう場合は、事前にいくつかの設定パターンをプロポに入力しておくことが多いです。一方、マルチコプター型の機体は、多くの場合、固定ピッチを採用しています。これはモーターの回転数を制御することで、上昇や下降、前後左右への移動や機首方向の変化をおこなうもので、プロペラのピッチ角を変えることができません。構造は非常にシンプルになりますが、例えば、機体を降下させる時にモーターの回転数を落とさなくてはいけないなどデメリットもあります。しかし、最近では機体に搭載されたセンサーで、自動離着陸ができるようになっており、そのデメリットもカバーされています。

③フライトの難しさ

一般的なホビー用のシングルローターヘリは、飛ばすのが非常に難しいものです。最近では高性能な3軸ジャイロが搭載されているので、以前と比較すると簡単になってきたかもしれませんが、それでもコントロールするにはかなりの練習が必要となります。機体の操縦は一点でホバリングさせることが一番難しく、常に機体が一定の方向に流れないように、当て舵を打っていなくてはいけません。そういう意味では、フライト中はまったくスティックワークを休みヒマはないでしょう。一方、一般的なマルチコプター型の機体は、優秀なフライトコントローラーが搭載されていることもあり、操縦は非常に楽なものとなっています。手を離すとその場にホバリングしてくれるような機体が多く、常に舵を打っているようなシングルローターヘリとは大きく異なります。あまりに安定して飛ぶので、ホビー用途で楽しむ人には物足りなく感じるかもしれません。しかし、決して油断せず、慣れるまではしっかりと練習を積むことが大切です。

④進化するシングルローターヘリ

ホビー用途では昔からさまざまな機体がリリースされてきたシングルローターヘリですが、最近では産業用のドローンの世界でもシングルローターヘリが注目を集めています。大きなメインローターを回転させることで、ペイロードに余裕があり、ひとつのメインローターで飛ぶので燃費も良好です。また、スピードも出せるので、急いで現場に急行する場合などに有利となります。最近では、そういった特性を活かして、災害救助や物資の搬送などの分野で活用が模索されています。そういった意味で、今後もシングルローターヘリの活躍するシーンは、ますます増えていくものと思われます。