測量の最前線で活躍する最新ドローン事情

ドローンがさまざまな領域で活用されるようになってきた昨今、最新のテクノロジーを搭載した目的に特化したドローンの存在が注目を集めています。

そんな中でも最も注目を集めているのが、測量領域で活躍するドローンです。今回は最新のシステムを搭載した測量用ドローンの今を紹介していきたいと思います。

①なぜいま測量用ドローンが注目されるのか

測量用のシステムを搭載したドローンが注目を集めているのは、その高性能さだけが理由ではありません。現在、日本ではあらゆる土木施工について、ICT建機を活用したICT土工への移行を推進しています。これまでのようにブルドーザーやショベルカーを人間が経験からくるコツと勘を頼りにおこなうのではなく、3D測量データに基づいた詳細な計画をICT建機にインプットし、そのとおりに施工をおこなうことで正確で効率性の高い土木施工が目指しています。

土木施工は必ず事前に測量が必要になります。従来は測量士が地上から作業をおこなっていましたが、今後、3D測量データをベースに土木施工が進むようになった際、この基礎となる3D測量データを収集するのがドローンになります。これまで人間が地上でおこなっていた測量を、ドローンが上空から空撮することでデータ取得するようになるわけです。

上空から空撮によって測量をおこなうことには多くのメリットがあります。まず、圧倒的に効率性が良く、従来よりも短時間で終わらせることができます。人手不足が深刻化する中、生産性の向上はどの業界でも必須であり、ドローンによる空撮はそのような部分をカバーすることが可能です。

また、人間では近づきにくい場所でも、ドローンならば簡単に向かうことができますので、作業する測量士のリスクを減らすことができ、安全に測量業務をおこなうことができるようになります。特に日本は山間部が多く、人間が行けない場所も多くありますので、これも大きなメリットでしょう。

そして、取得した3D測量データはソフトウェアに入れることで、さまざまな形に加工し、必要な人に必要なデータをすぐに共有することができます。すべての工程がこのデータを元に進みますので、一元管理という観点からも非常に便利なのではないでしょうか。

他にもドローンはすぐに起動できるので、従来のようにさまざまな機材を用意して、手順に従ってひとつずつおこなっていく測量よりも機材の準備や携帯する点数も減っており、機動性に優れたオペレーションが可能な点や、取得したデータをさまざまな形で生成、加工することができます。

このようにドローンを使った測量はさまざまなメリットがあり、今後ドローンの活用はますます進んでいくことでしょう。それでは次に測量用ドローンの最新機能について見て行きたいと思います。

②測量用ドローンの最新機能について

そんな測量用ドローンですが、ここ最近の機体は現場の要望に応じた最新テクノロジーを搭載した機体が多く出現しており、注目を集めています。

まず、注目されているのが3次元レーザー測量です。測量をする際はドローンに搭載されたカメラを使っておこないますが、通常のカメラでは木が生えていて地表が見えないような場所や急斜面の測量はおこなえません。しかし、国土の狭い日本においてこのような場所の測量ができないようでは産業面で活用することはできません。それを解決するのが3次元レーザー測量です。

これは機体にレーザースキャナーと呼ばれる特殊な機器を搭載し測量することで、木などを除去した地表面の測量データ(DEM)や、木などを含めた地物の表面反射データ(DCM)といったデータの生成をおこなうことができるようにしたものです。また、測量の際に地表マーカーを設置しなくても測量ができるのは大きなメリットであり、生産性向上だけでなく、急斜面でのマーカー設置のリスクなども除去できるため、安心かつ効率的な運用が可能となっています。

また、ドローンが測量に使われるようになると、今度はその精度が求められるようになってきました。ドローンは普段はアメリカのGPSやロシアのグロナスといったGNSSの情報をリアルタイムで検知して自分のいる位置を把握しながら飛行をしています。これにより自動制御が可能となっていますが、GNSSは飛行するエリアや日時によっては測量で求められる精度を満たせない条件になることも多く、3D測量データとしては不安が残ります。みなさんも普通にドローンを飛ばしていて、GNSSが狂っていて着陸場所がややズレてしまった、という経験があるかと思いますが、普段の飛行ならいざ知らず、測量ではちょっとしたズレが致命傷になります。

そんな測量の精度を上げるために利用されているのがネットワーク型RTKです。これはGNSSの電波だけでなく、地上にある基地局の情報も利用して移動局の自己位置をリアルタイムで測定していく方法です。このRTK機能をドローンそのものに内蔵し、ドローンを移動局として自己位置の把握をさせ、測量の精度を上げていくシステムが、RTK搭載ドローンであり、ドローン界の巨人であるDJIを始め、さまざまなメーカーからドローン搭載用のRTKシステムが発表されています。

日本では国土が狭いこともあり、山間部や建造物の周囲などGNSSの電波が取得しにくい場所でドローンを飛ばし、測量をおこなうことも少なくありません。このネットワーク型RTKシステムを活用することで、ドローンが自分の位置をcm単位で把握し、効率的かつ正確な測量を可能にしているのです。

③DJIのRTK搭載ドローンについて

先ほど記載した通り、ドローンマーケットにおいて世界の7割を占めると言われているDJIもRTKを搭載したドローンや地上に設置してGNSSの電波を拾うレシーバーである「D-RTK2モバイルステーション」などを発売し、この領域でのシェアを高めようとしています。そんなDJIのRTK搭載機を2機紹介したいと思います。

■PHANTOM4 RTK


あの名機「PHANTOM4 Pro」にRTKシステムを搭載した機体です。2018年11月に発表されたこの機体には、cm単位での正確なマッピングができるようRTKシステムが内蔵されており、1インチCMOSセンサー搭載のカメラとの組み合わせで、容易に正確なマッピングデータを作ることができます。機体自体は信頼性の高い「PHANTOM4 Pro」がベースとなっており、すぐに起動して飛ばすことができますので、従来よりも作業の効率性が向上し、正確なデータ収集ができるようになっています。

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■MATRICE210 RTK V2


こちらは2019年2月に発表された最新測量用ドローンです。産業用ドローンとして開発された「MATRICE210 SEREIS V2」にRTKシステムを内蔵しており、さらに下向きに2つのジンバルを搭載可能で、中型の機体で汎用性に富んだ仕様となっています。この機体の特徴としてはさまざまなカメラを付け替えて搭載できる点があり、状況に応じた使い分けができるのと、前面、底面、上面の障害物回避センサーや衝突防止用のビーコン、そして「DJI AirSense」と呼ばれる付近の実機情報を取得するシステムを搭載することで、より安全なフライトを可能にしています。

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④まとめ

最新の測量用ドローンの仕組み、いかがでしたでしょうか。非常に精緻なデータを作成する必要があるからこそ、ドローンの自己位置をcm単位で調整できるネットワーク型RTKが重宝されるようになっており、ドローンに内蔵することで移動局として活用する方法は今後のドローンによる測量のスタンダードになっていくのではないでしょうか。ますます熱を帯びる今後のドローンを活用した測量に期待が高まります。