ドローン業界でも注目されている模型用エンジンの可能性

数多くのドローンがさまざまな領域で飛ぶようになってきた現在の産業用ドローン業界。いろいろな分野で活用が始まると、問題として出てきたのがドローンの飛行時間です。

プロの現場でドローンを使う場合、現在のモーターとリポバッテリーの組み合わせでは、どうしても飛行時間に限界があり、機体自体には問題なくても、飛行時間がネックとなり導入が難しくなるケースもあるようです。

そこで注目されているのが模型用エンジンです。モーターとリポバッテリーと比べ圧倒的に燃費が優れているエンジンについて、今回は見ていきたいと思います。

①模型用エンジンの特徴

ドローンで使用が検討されている模型用エンジンですが、ラジコンの世界では昔から使われており、むしろ電動(モーター)よりも歴史は遥かに長いものになります。電動機がブラシレスモーターとリポバッテリーの組み合わせが出るまで、非力なブラシモーターとニッケル水素バッテリーやニッカドバッテリーの組み合わせで飛ばしていましたが、お世辞にも満足に飛ぶようなものではありませんでした。

それと比べて模型用エンジンはその歴史も長く、さまざまなサイズのエンジンが開発され、空ものRCのパワーソースといえばエンジンという時代が長く続きました。

エンジン以外に選択肢がなかったこともエンジンが主流だった理由のひとつですが、それ以外でもエンジンには多くの良さがあります。

まず、何と言ってもその燃費の良さでしょう。モーターとバッテリーの組み合わせと比べて圧倒的に燃費が良く、ちょっと飛ばしたくらいではまったく燃料が減っていないということもよくあります。

また、エンジンはトルクフルな飛びを可能にします。トルクがあるということは大きなプロペラを回すことができるので、少ない回転数でも大きなペイロードを稼ぐことができ、さまざまな分野でその特徴を活かすことができるようになります。

②模型用エンジンのデメリット

一方で模型用エンジンにはモーターと比較して弱点もあります。まず、エンジンにはエンストがあります。ドローンは4発〜8発のプロペラで飛ぶのが普通ですが、もしエンジンが1発でも止まってしまうと墜落の危険性がグッと高くなります。モーターではモーター自体が故障するか、リポバッテリーがバッテリー切れを起こすまで回転を続けてくれることを考えると、産業用として使うには信頼性が必要となります。

次に、エンジンそのものから発生する振動もドローンを悩ませる原因のひとつです。小刻みな振動は機体にダメージを伝えるだけでなく、フライトコントローラーにも影響を与える危険性があります。この振動対策は、模型用エンジンがドローンで使われれるようになるためには必須のものとなります。

また、複数のプロペラを回すドローンでは、複数のエンジンを用いる場合、すべてのエンジンのセッティングを同じにする同調が必要となります。設定を施すのもエンジンの面白いところですが、産業用の場合、毎回そんなことは言っていられません。この調整がうまくいかないと、しっかりとした飛行をすることは到底難しく、このあたりが電流を流せばいつも同じ性能を出してくれるモーターと比較して難しいところでしょう。

③最新のドローン用エンジンの活用について

そんな模型用エンジンを発展させ、ドローンに活用しようという動きが盛んになっています。最近の動きはドローンのプロペラを回すためにエンジンを使うのではなく、エンジンで発電した電力をモーターに伝え、それでプロペラを回すというものです。これですと、搭載するエンジンはひとつで済み、エンジンの同調を気にする必要もありません。エンジンそのものは燃費が良いので、少ない燃料でも十分な発電が出来、パワーソースとしてはモーターですのでエンストの心配もありません。それぞれの特徴を良く活かした非常に魅力的なハイブリッドパワーソースと言えるでしょう。

また、エンジンそのものを多発で搭載して飛ばす実験もおこなわれています。エンジンの特徴である飛行時間の長さを使って、物品の配送などに活用しようという動きは、長距離を飛行する必要がある配送用ドローンにとっては大きな恩恵を受けることができるでしょう。

このように模型用エンジンから派生して、ドローンにとってもエンジンは非常に重要なアイテムとなりつつあります。確かにモーターやリポバッテリーを使う電動と比較すると手間がかかるエンジンですが、燃費の良さ、トルクで大きなプロペラをしっかりと回せるなどそのメリットも計り知れません。また、前述したように、エンジンで発電してモーターでプロペラを回すといったハイブリッド方式にも注目が集まります。

一時期は時代遅れと言われていたエンジンですが、ここに来てそのメリットが再評価され、ドローンという新しい時代のソリューションでも求められるようになりました。今後のドローンとエンジンの組み合わせから目が離せません。