ドローンやラジコンヘリでも重要な固定ピッチと可変ピッチの仕組み
日本だけでなく、多くの国で飛ばされるようになったドローン。そのドローンは、アームの先端に搭載されたモーターが回転し、モーターに取り付けられたプロペラ(ローター)が回転することで揚力を得て空中を飛ぶことができますが、そのほとんどはモーターに直接プロペラが固定されており、モーターが回転するとプロペラも合わせて回転するものです。これはいわゆる固定ピッチと呼ばれる方式を採用しているのですが、中には可変ピッチなる方法もあるのはご存知でしょうか?今回はこの「固定ピッチ」と「可変ピッチ」を紹介していきたいと思います。
①固定ピッチの特徴
この「固定ピッチ」と「可変ピッチ」、初めて聞く人もいらっしゃるかもしれませんが、現在の世の中に出回っているドローンは、そのほとんどが固定ピッチとなります。この場合のピッチとは主にプロペラのピッチ角のことを指し、固定ピッチは文字通り、プロペラのピッチ角が固定されている(=変更できない)仕様になります。
現在のマルチローター型のドローンはモーターにダイレクトにプロペラが取り付けているシンプルな構造がほとんどで、ピッチ角を変えることは基本できません。しかし、シングルローターのラジコンヘリなどはその主流は可変ピッチとなっています。こちらはプロペラのピッチ角を自由に変更することができ、これによってさまざまなメリットがあります。しかし、今のところ可変ピッチを採用したドローンは報道ではいくつかあるものの、量産されていたり汎用機としてはありません。
固定ピッチのメリットは構造がシンプルなことでしょう。そのためセッティングも簡単で、特に部品点数の増加で自重を重くしたくない小型機には最適な構造となっています。ただ、プロペラの回転数はモーターの回転数に依存しているので、高度を降ろす際などに、モーターの回転数を落とさないと機体が降りて来ず、逆にモーターの回転数を落とすということは浮力がそれだけ減ることになりますので、地面に向けて急に落下し、機体が叩きつけられたりする可能性があるなど、特に降下や着陸時などには細心の注意が必要です。
しかし、最近では優秀なフライトコントローラーが回転数をしっかりと制御してくれ、さらにセンサーによって自動離着陸機能が備わっているので、こうした心配も少なくなってきているのが実情です。
②可変ピッチの特徴
これに対して可変ピッチは複雑な構造をしており、部品点数も多めで全体的に重量はかさばります。また、モーターの回転数とプロペラのピッチ角の調整をしなくてはいけませんので、セッティングに関しては非常に難しくなります。しかし、プロペラのピッチ角を自由に変えることで、降下時にモーターの回転は落とさなくても、マイナスピッチで降りてくることができたり、マイナスピッチを入れておくことで背面飛行ができるようになるなどメリットも多くあります。
実際、シングルローターのラジコンヘリはそのほとんどが可変ピッチ機構を採用しており、モーターやエンジンの回転数(スロットル)とピッチ角を調整し、自分のフライトスタイルに合った設定をおこなったり、複数の設定をしておいて上空でモードを切り替えながら飛行したりしています。可変ピッチは自由にピッチ角とスロットルを設定することで、飛行の幅が広がり、さまざまな飛ばし方ができるようになるのが特徴です。
③ドローンは今後も固定ピッチが主流!?
このように一長一短ある固定ピッチと可変ピッチですが、ドローンにおいては今のところは固定ピッチがそのほとんどを占めています。可変ピッチのメリットを差し置いても、シンプルな構造によるコスト削減が優先されるのかもしれませんし、前述したように気圧センサーなどを搭載することで、自動離着陸が可能となった現在、降下時の難しい操作も過去のものとなってきたのかもしれません。しかし、今後産業用ドローンなどで高い飛行性能が求められた際、可変ピッチの良さが認識され、もっと注目を浴びることも十分にありえます。現に可変ピッチをテストしているドローンなども発表されており、特殊な用途向けの産業用の機体などではそのメリットを活かした可変ピッチを採用した機体も登場するかもしれません。細かい部分ですが、そういった細部の今後の展開や進化にもぜひ注目してみると面白いかもしれませんね。