改正航空法の成り立ちと今後の展望について
2015年12月の航空法改正の経緯
ドローンを飛ばす際に航空法で定められたルールに則って飛ばさなくてはいけなくなったのは2015年12月10日でした。それまでドローンを含む無人航空機、いわゆるラジコン飛行機やラジコンヘリなどは航空法の対象外であり、ドローンが産業用として活用されるまでは、ホビーの世界では業界全体でモラルとマナーを守り、安全な運用をおこなって、社会から市民権を得て楽しんでいました。
しかし、2013年頃から手軽に空撮ができるマルチコプター(当時はドローンよりこの呼び方の方が多かったのです)が登場し、これまでラジコン飛行機やラジコンヘリを飛ばしたことのない人が多く無人航空機を飛ばすようになりました。ラジコン飛行機やラジコンヘリは最初にラジコンクラブに入会して、先輩クラブ員に指導してもらいながらモラルやマナーも学んでいくことが多かったのですが、マルチコプターの登場でそういった構造が崩れ、ゲリラ的に飛ばす人が登場したのです。
そして、2015年4月に、いわゆる「首相官邸無人航空機落下事件」が発生します。首相官邸の屋根にドローンが墜落したこの事件は大きく報道され、ドローンの存在を世の中に広く知らすこととなりました。この事件をきっかけとして、ドローン関連の法整備が急がれることになり、前述の改正航空法で無人航空機の飛行ルールが定められることとなったのです。
改正航空法の詳細についてまとめている国土交通省Webサイトはコチラ
改正航空法の今後について
さて、改正航空法が施行されて2年4ヶ月ほどが経ちますが、この間、数件の事故や違反による検挙などは出ているものの、例えば死者が出るような大きな事故や建物などに大損害を与えるようなアクシデントは報道されていません。そういった意味で現在の改正航空法は一定の評価をしても良いのではないでしょうか。そして先日、このような発表が国土交通省からありました。
http://www.mlit.go.jp/report/press/kouku01_hh_000087.html
3月29日に発表された内容では、~無人航空機を使った荷物配送の実現に向けて~という副題を添えて、「無人航空機(ドローン)の目視外飛行に関する要件をとりまとめました」という題名で、ドローンによる荷物配送を実現するために必要な目視外飛行に関する要件をまとめたというもの。安倍首相は2015年に「早ければ3年以内にドローンで荷物配送を可能にする」と発言しており、これらの動きは「空の産業革命に向けたロードマップ」に沿って着実に前進していることとなります。
さて、具体的な内容ですが、現状では安全確保の観点から飛行経路全体を見渡せる位置に機体や状況を監視する補助者の配置が必須でした。今回の要件設定では、補助者は完全に代替することはできないとした上で、飛行場所を山や河川、森林など第三者が立ち入る可能性の低い場所を選定するとし、さらに個別要件として第三者が立ち入る兆候などを機体や地上のカメラから遠隔監視することとしています。また、事前に立ち入り管理区域に関して、周辺の住民などに看板やインターネットなどで広く周知しておくようにするとも定められています。
このように要件だけを見るとこれまでとあまり大きく変わっていない印象を持つかもしれませんが、飛行場所が限定とはいえ補助者なしで目視外飛行がおこなえる要件が整ったことは、ドローンを今後活用したいさまざまな領域において大きなステップではないでしょうか。具体的にいつからこの要件をベースに運用がなされるかは不明ですが、これまでのさまざまな実証実験の結果を踏まえ、近いうちにこの要件での目視外飛行がおこなえるようになることでしょう。ドローンが活躍できるシーンがまた広がっていきそうで、今から期待してしまいますね。