知っておきたい!無人航空機における事故・重大インシデント発生時の対応について

ドローンやラジコン飛行機、ラジコンヘリなど無人航空機を飛行している際は、何よりも安全な飛行が優先されます。無人航空機は機体によっては重量もあり、さらに高速で回転するプロペラがありますので、墜落=機体が壊れるだけでなく、人を傷つけたり、物を壊す危険性があります。日頃から航空法を遵守し、安心安全な飛行を心がけるようにしましょう。

それでもさまざまな要因で事故や重大インシデントと呼ばれる状況が起きてしまう可能性があります。そこで今回は万が一そういった状況になった場合における正しい対応の仕方について紹介していきたいと思います。

①事故・重大インシデントの定義について

無人航空機を飛行させていて事故や重大インシデントが発生した場合、飛行させていた人はただちに飛行を中止して、負傷者がいた場合は救護をおこなうとともに、状況の詳細を速やかに国土交通大臣に報告する義務が航空法にて定められています。もし、事故等の報告をしない又は虚偽の報告をおこなった場合は航空法第157条の10第2項に従い、30万円以下の罰金が科せられます。また、負傷者の救護など危険を防止するために必要な措置を講じない場合は航空法第157条の6に従い、2年以下の懲役又は百万円以下の罰金が科せられますので必ず遵守するようにしましょう。


※国土交通省資料より抜粋

それではどういった場合に報告しなくてはならず、どのように報告すればよいのでしょうか?

まず、国土交通大臣に報告する必要のある状況は下記の通りです。状況によって「事故」と「重大インシデント」に区別されます。


※国土交通省資料より抜粋

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■事故
・無人航空機による人の死傷(重症以上の場合)
「人の死傷」については重傷以上のものを対象とし、悪天候等の外的要因によるもの(無人航空機を飛行させる者に過失がないもの)も含む。「人」については、第三者に限らず、操縦者及びその関係者を含む。なお、軽傷と判断されるようなケースについては重大インシデントに該当するものとして報告の対象とする。

・第三者の所有する物件の損壊
第三者の所有物(人工物)を損傷させた場合の全てを報告の対象とする。例えば、衝突による瓦のひび割れや構造物の壁を傷つけた等軽微なものを含むものとする。

・航空機との衝突または接触
航空機若しくは無人航空機のいずれか又は双方の機体に衝突若しくは接触による損傷が発生したと確認できるものを報告の対象とする。なお、衝突又は接触のおそれがあっただけのものは除き、これらは重大インシデントに該当するものとして報告の対象とする。

■重大インシデント
・無人航空機による人の負傷(軽症の場合)
a)飛行中航空機との衝突又は接触のおそれがあったと認めたとき
無人航空機の飛行経路上及びその周辺の空域において飛行中の航空機を確認した場合で、衝突を予防するため無人航空機を地上に降下させるなどの衝突回避措置を講じたものを報告の対象とする。

b)無人航空機による人の負傷(法第 132 条の 90 第1項第1号に掲げる人の死傷を除く。)
無人航空機により人が負傷した場合で、法第 132 条の 90 第1項第1号に掲げる人の死傷、つまり重傷以上を除いたものを報告の対象とする。「人」については、第三者に限らず、操縦者及びその関係者を含む。なお、無人航空機の飛行によらないが、飛行のための地上待機、地上移動、離着陸のための地上滑走中に発生した事案(例えば、回転中のプロペラによる負傷、飛行させようとしている無人航空機の発火による負傷等)についても対象とする。

・無人航空機の制御が不能となった事態
飛行中に無人航空機が機体不具合により制御不能となった事態を報告の対象とし、これにより無人航空機を紛失した場合も含む。ただし、操縦ミスに起因する操縦不能によるものは報告の対象外とする。

・無人航空機が飛行中に発火した事態
飛行のために無人航空機の推進装置が稼働状態にある場合において発生したものを報告の対象とする。これらに該当しない状態での発火(例えば、保管中の無人航空機のバッテリーの発火等)については、飛行に関連しない発火として、報告の対象とはしない。

・航空機との衝突または接触のおそれがあったと認めた場合
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②救護義務と報告義務について

これらの状況が発生した場合は救護義務が発生します。航空法では下記のように定められています。

法第 132 条の 90 第1項に規定する事故が発生した場合に、「負傷者を救護することその他の危険を防止するために必要な措置」として、操縦者が直ちに無人航空機の飛行を中止し、講じる必要のある措置をいい、具体的には次の事項をいう。なお、事故に該当する場合に限らず、必要と認められる場合には、所要の救護活動を行うべきである。

a)負傷者を救護すること
事故が起きたときは、操縦者及びその関係者は次のような措置を講じなければならない。
ア)負傷者がいる場合は、医師、救急車等が到着するまでの間のガーゼや清潔なハンカチ等での止血等、可能な応急救護処置を行う。この場合、むやみに負傷者を動かさない(特に頭部に傷を受けているときは動かさない)ようにする。ただし、二次的な事故等のおそれがある場合は、速やかに負傷者を安全な場所に移動させる。
イ)救急車の要請 等

b)その他の危険を防止するために必要な措置
負傷者の救護を目的とする措置に加え、事故による被害が拡大することを防止し、かつ新たな法益侵害を生じさせないため、次のような措置を講じるものとする。
ア)火災が発生している場合に行う消防への連絡や消火活動
イ)警察官への事故の概要の報告(事故の発生場所、負傷者数や負傷の程
度、物件の損壊の程度等) 等

c)飛行の中止
事故の発生後も当該無人航空機が飛行状態にある場合は、「負傷者を救護することその他の危険を防止するために必要な措置」を講じるため、速やかに無人航空機を着陸させるものとする。無人航空機を着陸させるにあたっては、事故発生場所から最寄りの無人航空機が安全に着陸できる場所(出発地、目的地、緊急着陸場所を含む。)を選定する。

また、事故や重大インシデントが発生した場合は速やかに報告をおこなわなくてはなりません。報告の方法としてはドローン情報基盤システム(DIPS2.0)にある事故等報告機能を使って、該当する報告先官署宛て速やかに報告をおこないます。

なお、報告先官署は、許可・承認を受けた飛行の場合は該当の許可・承認を発行した官署、許可・承認を受けていない飛行(例えばカテゴリーI等の飛行)の場合は飛行した場所を管轄する官署に分かれます。

まず、DIPS2.0にログインし、ページ下部の「無人航空機に関する事故等発生時の手続き」の「事故等の報告」をクリックします。次に「事故情報一覧」をクリックすると自身の事故の一覧が出てきます。

新たに報告をおこなう場合は右下の「事故等の報告」をクリックします。事前にDIPS2.0で申請した飛行ならばそちらを、申請外での飛行時の事故ならば「その他の飛行」を選びます。

クリックすると事故の詳細を入力する画面になります。できる限り詳細に、わかりやすく正確に記入して最後に一番下の「報告」ボタンをクリックします。

なお、DIPS2.0をやむを得ない理由で使えない場合は電子メールでの報告も可能です。国土交通省のWebサイトから様式をダウンロードして報告先一覧にあるメールアドレス宛に報告書を送りましょう。

③事故が発生した際に注意したいこと

無人航空機で事故や重大インシデントを起こしてしまった場合、慌ててしまい自身や周囲にさらなる危険が広がる恐れがあります。まずは落ち着いて、冷静に対処するようにしましょう。

その上で国土交通省では特に下記の2点について注意喚起をしていますので、覚えておくようにしましょう。

・回転しているプロペラには絶対に手を出さない
墜落後もプロペラが回転を続ける中、機体の電源ボタンを操作しようとして怪我をするケースが多発しています。動いている機体に近づくのは非常に危険です。キルスイッチ等、日頃から機体の動作を強制的に停止させる操作を確認し、即座に対処できるよう備えるようにしましょう。

・不用意に近づかず、まずは安全を確認すること
無人航空機に多く使用されているリチウムポリマーバッテリー(リポバッテリー)は、落下等で強い衝撃を受けると発火する危険性があります。衝撃が加わった直後は異常がなくても、時間をおいて発火する恐れがあります。触れる前にバッテリーが膨張していないか等、バッテリーだけでなく機体も含めて必ず状態の確認をしましょう。


※国土交通省資料より抜粋

④まとめ

今回は無人航空機における事故や重大インシデント発生時の対応について紹介してきましたがいかがでしたでしょうか?無人航空機を飛行させるにあたってもちろん無事故が一番望ましいのですが、万が一の際に適切な対処ができることも大変重要です。こういった場合におこなわければならない事項をしっかりと頭に入れておきながら、ぜひ安全な飛行を心がけてください。

なお、事故や重大インシデント発生時の対応だけでなく、操縦スキル、無人航空機の基礎知識について資格習得を通じてポラリスドローンスクールで学ぶことができます。ぜひ、資格習得も検討頂ければ幸いです。

※ポラリスドローンスクール
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