ドローン活用で高効率&高精度!「DJI M350 RTK」+「DJI Zenmuse H30T」でおこなうダムの壁面点検
様々なシーンで活用が進む産業用ドローン。ポラリスエクスポートではDJI産業用ドローンを活用した多くのミッションを実施してきています。その中から、今回はドローンを使ったダム点検の様子をお届けしたいと思います。
産業用ドローンを活用したダムの壁面点検
今回の点検対象となる構造物は、半永久的、機能的な耐用年数が約100年と言われるダムですダムの規模により、国土交通省では3~5年に1回以上の定期検査が必要としています。
一般的に大規模地震等にも耐えうる構造を持つダムでは、構造物そのものよりも、周辺環境に対しての災害防止策を考慮した貯水・放水等の機能面の点検項目が多く存在します。

今回は、そういった通常想定された定期検査とは異なった緊急点検事項として、某ダム管理支所様よりダム構造物自体に発生しているコンクリート剥離等の危険個所の確認をおこないたい旨の相談を受け、株式会社大増コンサルタンツ(愛知県名古屋市)と株式会社ポラリスエクスポートは、共同でDJI産業用ドローン「Matrice 350RTK」にズーム・赤外線カメラ機能搭載の「DJI Zenmuse H30T」を搭載し、ドローンを用いた点検作業を実施をしました。
ダムの老朽化と今回の課題
先に述べたとおり、ダム本体は半永久的な耐久性をもつと言われていますが、一般的にいうダムの老朽化とは機能面であり、貯水池についてはおおよそ100年とされています。 この100年と言うのは、上流から流れ込んでくる土砂を貯めるための容量(堆砂容量)が一杯になってしまうまでの年月です。設備・機械は常時整備点検をおこない、古くなった物は交換され、いつでも使用できる状態にしてありますが、一方でダム本体に関してはその頑丈さゆえ細かな点検は実施されていないのが現状です。
今回、依頼のあったダムでは構造物そのものに緊急点検の必要性が浮上し、今回の点検テストの実施となりました。
その理由としては、該当のダムの中腹に他のダムにはあまり見ない展望テラスがあり、最近このテラスにてコンクリートの破片が発見されたことによります。上方から落下してきた破片と推測されており、このままではテラスを利用した見物客に被害が出てはいけないとのことで緊急点検を実施する運びとなりました。
ダム上部から底部を見下ろすと大きさをじかに感じることができます。
DJI Matrice 350 RTK+DJI Zenmuse H30Tの最強コラボ
今回のダムのような高層構造物の点検を人的でおこなう場合、重大なリスクが考えられます。検査員が巨大なダムの壁面に天端より垂らしたロープもしくはゴンドラにぶら下がり、地道に目視にて確認していく方法では、突風等による影響やそれにより引きおこる機材の破損などが考えられます。
そのため、今回は空中からの点検が可能な、ドローンを使った点検を採用することとなりました。さらに、ドローン自体が巨大な構造物に近づくことで懸念される乱流によるトラブルや壁面への吸いつきの危険など考慮し、安全マージン(離隔)を保つため高倍率ズームカメラを選択することでリスク軽減もおこなっています。
今回の点検では、DJIの産業用ドローンであるMatrice350 RTKと、DJI Zenmuse H30Tカメラジンバルを使って実施しました。
DJI Zenmuse H30T カメラジンバルの主なスペックと特徴は以下の通りです。
・可視光ズームカメラ倍率:光学ズーム7倍・デジタルズーム最大56倍までの可能
・レーザー測距計:測定範囲3~3000m
・赤外線カメラ動画解像度:640×512@30fps
・赤外線カメラ温度測定の精度:±2°Cまたは±2%(大きいほうの値を使用)
・温度測定範囲:-20℃~150℃(高利得モード)0℃~500℃(低利得モード)
ダムの壁面に現れた剥離部と、落下物の調査
今回の調査では、崩落の可能性がある展望テラス周辺をドローン及び高倍率ズームカメラにて点検しました。離れた場所からの目視ではまったく確認することができなかった剥離してしまった個所や細かなひび割れなどの詳細な状況が、安全マージンをもった離れた場所からでも、ドローンに搭載した高性能ズームレンズカメラを通して鮮明に確認することができました。これには現場にいた現場責任者及び点検チーム一同驚きを隠せず、最新の産業用ドローンの実力を多くの方に知って頂くことができました。
ダム底部に続く段差構造部、上空からは雪の塊か落下物かわかりません。
最大400倍ズームで確認すると雪の塊であるとはっきりとわかります。
DJI Matrice 4Tで立面自動航行のルートを検証
さて、今回の調査では、前述した「DJI Matrice350 RTK」以外にも、DJIの産業用小型ドローンである「DJI Matrice 4T」も現場で活躍してくれました。こちらの機体を持ち込んだ理由は、ダムの壁面調査をおこなう際のフライトプランを作成し、立面自動航行で今後の調査の効率性を上げることができるか、チェックするためです。また、サーマルカメラを標準装備する「DJI Matrice 4T」であれば、壁面のさまざまな状況を調査できると可能性があります。
ドローンを使った空中写真測量による対象物の状況把握や測量業務は、高効率・高精度なシステムとして年々進化を遂げています。
このシステムを高層構造物などにも利用するためには、フライトプランの作成や運用面でのコツが存在します。ウェイポイント機能等を利用し、マップ上で形状を想像しながら作成したり、特殊な設定をおこない構築する専用ミッションの設定が必要となります。
最近装備されつつある立面における自動航行ルートの構築は、現場で対象物を撮影するだけで自動的に飛行コースが生成されるという、非常に簡単かつ迅速にミッションが作成できるようになっています。このように設定が容易になったことで、構造物の定時的な点検調査のハードルも下がったと言えるでしょう。シンプルな操作で一度ルートを組めば、次、またその次と同じルートで撮影をおこなうことができるため、同一の構造物の別の時間帯の状態などを再現性をもって記録していくこともできます。撮影後のデータは3Dモデル化することで、直感的にどの部分が変化したかを確認することもできます。また、サーマルカメラによる撮影を同時におこなうことで、漏水部などの発見可能性を上げることも可能です。
Matrice4シリーズとD-RTK3を組み合わせて立面自動航行撮影作業をおこないます。
立面自動航行飛行ルートから構築した3Dモデル。上空から撮影した写真から作成した3Dモデルでは側面の再現がうまくいかない場合もありますが、側面からの撮影で検査対象面の詳細度が非常に向上します。
ドローンによる作業効率化、安全対策の確保
今回の点検作業では、本来であれば工数のかかる足場の構築や、ロープ・ゴンドラによる作業員が危険と隣り合わせでの点検の実施をおこなう必要がある現場において、ドローン及び周辺機器を利用することによって実現する情報収集の速さ、情報量の多さは関係者一同、非常に満足のいくものでした。
また、写真・動画だけでなく3Dモデルによって、異常個所や度合いの測定に力を発揮し、他業種間でも複雑な図面を読み取ることなく簡単に情報共有が可能です。
もちろん、ドローンのもたらす情報ですべて完結しない現場や案件もあり、最終的な判断は専門的な職人の目が必要なこともあります。
しかし、人が時間と労力をかけ、また危険と隣り合わせでおこなう作業の一部を、今回のようにドローンを使って情報収集や点検を実施することで、作業の効率化や安全対策に大きく貢献してくれます。
今後もポラリスエクスポートでは産業用ドローンの活用事例を取り上げていきたいと考えております。ご期待ください!
■産業用ドローンに関するお問い合わせはポラリスエクスポートまで!